短編「砂男」などと並んでE.T.A.ホフマンの代表作とされる長編「牡猫ムルの人生観」。一匹の牡猫が書いた随想に印刷のミスで音楽家クライスラーの伝記が紛れ込むという倒錯した構成、小説の解体と再生、フモールと芸術の混淆が楽しめる独特の存在感ある名作。本書は、その初訳を務めた秋山六郎兵衛による世界社版です。赤いタイトル文字、アラベスク風の装画など雰囲気のある装丁も魅力。岩波文庫版もありますが、戦後の質のあまりよくない紙に印刷されたこの単行本も、時代を映して特有の味わいがあります。帯付き。
*もともとの紙質と経年劣化により、印刷の文字も若干読みにくくなっています。表紙の変色あり、帯の一部にも破れがみられますが、刊行から70年が経過している点を考えても、概ね古書としては標準的な状態かと思われます。透明フィルムでカバーを施してお届けします。諸々ご了解の上ご注文ください。
著者:E.T.A.ホフマン
訳:秋山六郎兵衛
装丁:川合喜二郎
発行:世界社
1950年初版
130mm × 182mm / 450p
ソフトカバー