「…それは業のように私の生活に喰い込み、私の魂までも捉えていたのであるが、私はその仕事の方面ではいつもみじめな思いをなめさせられ…」(「小鳥が歌をうたっている」より)
佐藤愛子の二度目の夫として、あるいは北杜夫の同人誌仲間として知られる著者の数少ない著書の一冊。作家としては芽が出なかった自分を投影した虚無的な表題作ほか三作を収録。真鍋博の装幀が函といい本体といい扉といい随所にいきていて、古びた本ながら非常に美しい一冊。鳥をモチーフとした異なる絵がそれぞれ5箇所に描かれているという贅沢で丁寧なブックデザインです。南北社新鋭創作叢書9。版元の新刊目録つき。
*函は非常に簡素なボール紙製で、背表紙の折れアトや黄ばみが見られますが、保護用の透明フィルムでカバーしてお届けします。本体の背の部分にわずかなヘコみがあります。それ以外は本文もきれいな状態で装幀もはっきりとお楽しみいただけるかと思います。
著者:田畑麦彦
装幀:真鍋博
発行:南北社
1965年初版
136mm x 192mm / 277p
ハードカバー、函