主人公の元をたびたび訪れては奇妙な問答を繰り返し、いつのまにか何かを押し付けたりやらせたりする男・山名君との珍妙なやりとりが主体の表題作ほか、語り手と友人知人が紡ぐ物語10篇。のほほんとしながら、どこか滲み出る哀愁や垣間見える毒、昭和の中間小説らしい雰囲気も有しつつ繋がる会話の不思議な持ち味。舞台となった昭和20-30年代の社会風俗も興味深い、とは野暮でしょうが、個人的には「満員電車」「留守番綺談」などが好きです。表紙から背表紙まで行き届いた和田誠の装丁がよく似合う、番町書房版。
*小口天にそれなりのシミあり。カバー上部に2cmほどの裂けあり。やはり経年のため、ところどころくたびれておりますが、本文を楽しむ分には問題ありません。事前にご了承くださいませ。
著者:梅崎春生
装丁:和田誠
発行:番町書房
1974年初版
125mm x 195mm / 273p
ハードカバー