「たっくほっこ たっくほっこ」と時計の針。ケーキを食べれば「きくきくつるっ」とフォークがすべり、猫が倒した花瓶からは「がぼがぼ」と水が流れ、やがて雨が「しそしそ」と降り出す…。おるすばん中の「わたし」の耳には誰もいない部屋の音が大きく新鮮に聞こえてきます。世界を知り始めたばかりの小さな子を取り巻く「音」というものを、大胆かつ細やかにすくいとった優しい絵本。おかあさんが帰ってきた音は「ぼぼぼ」とタクシーとともに。
ちょっと余談で店主の感想ですが、これからは「小さい子のお留守番」といったジャンルの絵本も減っていくのかなあと思います。喫煙場面が描かれなくなったように。現実ではやはり幼子のお留守番は避けた方がいいと思いますが、一人で過ごすからこそ気づく世界、という物語には個人的に惹かれるものがあります。
*経年によるホチキスの錆び、ページのくたびれなどはやはりみられますが、概ね古い雑誌絵本としては標準的な状態かと思われます。
文:櫻井道子
絵:降矢洋子
発行:福音館書店
1974年5月1日発行(かがくのとも62号)
208mm x 238mm / 23p
中綴じホチキス留め