「だれでもみんな、胸のなかに、ひとつずつバイオリンをもっているの。そのバイオリンが鳴りひびく、きょうは最後の日よ」…
バドミントンの羽を追って不思議な経験をする少女。一人の少年にしか見えないオレンジ色の自転車に乗った少女たち。おばあさんの不思議な黄色いスカーフ…。安房直子が描く世界の優しさと透明感、そして叙情に満ちた景色と細やかな情感をすくい取るセリフの数々。その言葉のかすかなゆらめきこそ、この人の真の魅力のような気がします。遠い日を思い出す切なさと明日への希望。少女(老女)たちの何かへの決別。味戸ケイコの挿絵によって、このささやかなファンタジーに美しさと妖しさをひとしずく。個人的には「不思議な文房具屋」のようなお店が出来たらいいなあ…とこれも夢想。
*小口に若干のシミあり。それ以外は特に目立つ難はなく、古書としてごく標準的な状態です。元からなのかは不明ですがダストジャケットはついておりません。
著者:安房直子
絵:味戸ケイコ
発行:岩崎書店
1984年 4刷
115mm x 155mm / 135P
ハードカバー