サブの村は貧しく、冬になれば大人たちは都会に出稼ぎにいってしまう。残されたサブはいつしかカラスの群に寂しい思いをぶつけるようになり…。仕方ないとはわかっていても切なくなる子どもの悲しみ。ただ普通に生きているだけのカラスを、勝手に恨みあるいは勝手に可愛がり、子どもといえど人間の身勝手さにカラスも呆れつつも、物語には小さな子や小動物に寄り添う優しさがあります。冬の寒村のひとつの情景を切り取った情感あふれる一作。いわさきちひろらとも行動を共にした久米宏一の版画調の挿絵があたたかさと寂しさをともなって素晴らしい。途中で挿入された子ガラスの見る夢が一篇の詩のようで不思議と胸打たれます。
*ダストジャケットなし。割れるというほどではありませんが、少しページの開きがよすぎる箇所があります。お手元に届いてからはお取り扱いにご注意ください。巻末に元の持ち主の名前ハンコが小さく押されています。それ以外は古書として標準的な状態です。
著者:須藤克三
画:久米宏一
発行:童心社(日本の動物記シリーズ)
1973年5版
188mm x 242mm / 32P