70年代、パリからギリシャへ。愛する女優メリナ・メリクールの国、陽光あふれる国。金はない、しかし好奇心と知性だけは豊富にあるムッシウ・ヤマダは、ツアー参加といえど、彼なりの旅を楽しむ。ホテル、ガイド、出会う人々の描写のなかに独特の皮肉とユーモア、そして一抹の淋しさと陽気さをにじませながら続く旅。あるいは友人夫妻と共に旅するスペインでは、三人旅ゆえの不思議な空気と異国の旅の風景が奇妙に織り交ざる…。ファンに愛されながらも絶版のままとなっていた旅行記を今新たに再編成するのは、やはり編集工房ノア。この素晴らしき文章世界を旅という枠組みのなかでじっくり味わってほしい名編です。単行本収録としては久方ぶりとなる「ローマ日記」も掲載され、さらに価値ある一冊に。
余談ですが、店主はかつて『旅のなかの旅』(新潮社版)を読んで感動し、それから完全に山田稔ファンになりました。その意味からも、本書は個人的にも非常に嬉しい旅ものの再編集です。現在90歳を超えた著者が今ふりかえる40年以上の時を経た旅に、読者もまた共に出かけてゆく、そう思うと純粋に感慨と喜びを感じます。
*こちらは古書ではなく新刊本となり、定価販売となります。
*ただいま著者サイン本となります。
著者:山田稔
発行:編集工房ノア
発行年:2023年初版
130mm x 190mm/233P
帯付き、ソフトカバー