「わたしの暮しは、ハイカラなものが何一つない、もっさりとしたものです。それでも、さして不自由をせずにやっていけるのは、しゅろぼうき屋さんがあったり、桶屋さんがあったりするおかげです。」
かんざし、いちまさん、型染めに打ち出しのお鍋、手焼きせんべいにすぐき。京都の街で長年愛され使い込まれてきたモノと技術と味を、36篇に分けて穏やかに語る随筆集。昭和40年代に60代の著者が語るそれは、現代の京都からは遠くなったものもあれば変わらぬものもきっとある。時折、こういった文章に触れて庶民の暮らしの道筋をたどるのも意義深いかもしれません。それぞれの話に一つずつ著者が選んだお店が紹介されているのも興味をそそられます。味戸ケイコの装丁が昭和的叙情を醸し出して愛らしい。
*表と裏の見返しそれぞれに蔵書印あり。小口に若干のシミあり。そのほか経年によるくたびれはありますが、おおむね古書として標準的な状態です。
著者:大村しげ
装丁:味戸ケイコ
発行:講談社
1974年初版
134mm x 195mm / 237P